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hort story

心の成分
なんでも切れる包丁を買って来た。
五右衛門包丁という名の、普通より少し大きめの包丁。
さすがに宣伝文句通り、トマトからごぼうまでなんでもスパスパ切れる。
あまりの切れ味に気を良くした俺は、
戸惑いや、猜疑心、知ったかぶりや、偏見を自分のポケットから取り出し、
まな板に並べ、次から次へ切っていった。
見事に切れる。
俺の心達はいとも簡単にバラバラになった。
一体それらが何から作られていたのか気になって、
偏見の切れ端の中身を覗いてみた。
すると中から出て来たのは古い社会科の教科書だった。
とっくに忘れていた記憶が、自分を形成していた事に驚いた。
君の心もここに持ってくると良いよ。
何で出来てるか俺に見せてくれよ。

- written by kim -

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