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hort story

ある選択
久しぶりに朝からの休日。向かったのは和菓子屋。
おはぎが食べてみたいって言い出したカルロスのためだ。

おい、カルロス。いいか、おはぎって簡単にいうけどな、大きく二つに分けるとつぶあんとこしあんだ。

お前何歳だっけ?
三歳!?随分ちんちくりんだな。よく聞け。お前の年齢からすれば95%の確率でこしあんが好きなんだ。なんかいいよなあの感じ。俺が小さいときはそうだった。
でもさ、大人の感触ってそうじゃないだろ?なんか至る所がゴツゴツしてたりさ、すれ違うと香水の匂いがなんか忘れられた南国みたいだったりさ。
カルロス、わかるだろ?
今つぶあんを食べることによって一歩踏み入るんだ。どこにかって?
危険な領域さ。8円のこしあんパンより1円の小さいつぶあんに惹かれちゃう幼稚園児になる可能性。エスカレートすると、
例えば思いっきりブランコをこいで楽しかったのに、1番高い所でちらっと見えたビル越しの夕日に何故だかキュンと来ちゃうカルロス、とか。
わかるか?そろそろ決めなくちゃいけない。
おはぎはすぐそこだ。教えてくれカルロス。

お前はどっちだ?


カルロスは真剣に考えた。指はもう立ててある、準備は出来ている。後は指差すだけなのに。
大きく一つ深呼吸して目を閉じた。

よし、決めた。
カルロスは背筋を伸ばして思い切ってそれを指差した。
若い女の店員がそれを見て意味深に笑い、カルロスは耳を真っ赤にしてうつむいた。
春が完全に終わり、今にも雨が降り出しそうな朝の出来事だった。

- written by kim -

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