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hort story

夫婦
大漁だったようで、男はひどく機嫌良く家に帰ってきた。
鯛を持って帰ると、妻はいつも喜んでくれたので、今日も
ひと際大きい鯛を見せて、驚かせてやろうと思っていた。
しかし、玄関で待っていたのは人形になってしまった妻だった。
もちろんなぜだかは分からない。
目から指先まですっかり布製品になってしまった妻は、
玄関で仰向けに寝そべりながら、しゃべる事も出来ず、とてもつらそうだった。
そこにたまたま郵便配達の青年が手紙を届けにやってきた。
妻の事を話すと、この現象は空気感染するから処分しなきゃいけないって
テレビで言ってましたよ、と言う。
少し青ざめながら、
人に知らせてきます、と言い、家から出て行く郵便配達の青年を
男はいつのまにか捕まえていた。
そしていつのまにか首を絞めていた。

男は玄関に戻ると妻の横に寝そべった。
自分の指がスポンジになっていくのを感じ、急いで妻の手を握った。
妻の目元が濡れていたので、きっと泣いたんだな、と思った。

- written by kim -

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