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hort story

金魚
よく数えると金魚鉢に入っていたメダカが増えていた。
誰かが黙って入れたのかもしれないが、俺の部屋にいつのまにか侵入して、
わざわざメダカを入れる奴なんていない。
そもそもこの金魚鉢自体、いつからあるのか分からない。
大分昔からあった様な気がする。

ああ、そうだ。じいちゃんだ。
じいちゃんが近所の祭で買って来てくれたんだ。
あの日は祭なのにお母さんにひどく怒られて、
一人で部屋ですねてた時、じいちゃんが新品の金魚鉢と一緒に
持って来てくれたんだ。
喋ることができなかったじいちゃんは
ちょっと気恥ずかしそうにしながら乱暴に金魚を置いていった。
祭りのために人通りが多くなって騒がしい家の外。
そのためかいつもより静かに感じる部屋の中で、
俺はポトッポトッと、いびつな金魚達を金魚鉢に移した。
とても良く憶えている。

いつ金魚がメダカになったかは憶えていない。
メダカがなんで増えているのかもまったく分からない。
けど、そんな事どうでも良いのかもしれない。
しばらくじいちゃんの墓参りに行ってない事を思い出しながら、
俺はもう一度メダカを数え始めた。

- written by kim -

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