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hort story

下手な嘘
上の階の住人が今日はやけに騒がしいので、
なるべく落ち着いたテンションになるように気を配り、ゆっくり一つ上の階に上がった。
するとドアが開いている。
鍵が開いているとかではなく、全開だ。
先週、外国人が引っ越して来たらしいとは聞いていたが、
まだ会っていなかったので、挨拶しようと声をかけた。
何度か声をかけた頃にノソノソと出て来たのは汗だくのラテン系の男。
はだけたシャツからは鍛えられた胸が見えている。

やあ、はじめましてで悪いんだが、少しドタバタうるさいから
ドアを閉めて、さらにもう少し静かに過ごしてくれ、俺はタクシー運転手だから
昼間寝なきゃいけないんだ。な、頼むよ

そう伝えた頃に、後ろから汗だくのインド系の男と呼吸の乱れた白人の男が出て来た。
俺は少し押され気味なムードを感じ、笑顔で彼らにも挨拶した。

男同士が裸で何やっても構わない、少しだけ静かにしてくれれば良いんだよ

と言うと、白人の男が、「何言ってる、俺たちすぐにうどんを打ってる。そうだ、
お前にも一つあげるよ。今打ったばかり。だとしたら早く食べてください」

そう言うと小さい袋を俺に放り投げ、ドアを閉めてしまった。
どう見てもスーパーで売っているうどんを受け取った俺は、
三人が手をつないで部屋の中に引き上げていくのを見逃さなかった。

- written by kim -

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