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hort story

紙飛行機
俺の部屋から見える向かいのマンション。
なにげなくそのマンションのベランダを見ていると、
大きな犬が飼われている事に気づいた。

きっとペット禁止だからベランダに隠されているんだろう。
その犬は俺の視線に気づき、少し嬉しそうな顔を一瞬だけ見せて、
またすぐにつまらなそうに座り込んでしまった。

俺は急いで紙飛行機にその犬の似顔絵を描いてその部屋に飛ばした。
きれいに紙飛行機は飛んで行く。
その犬は待ちきれず立ち上がった。

しかし、紙飛行機は届かなかった。
また座り込んでしまうのかな?と思って見ていると
その犬は雄叫びに近い遠吠えを始めた。
マンション中に響き渡る遠吠えは、
何度も何度も何度も繰り返された。
それはまるで霊安室に駆けつけた妻のようだった。

- written by kim -

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