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hort story
- 落とし物
- あ、ちょっとあなた、落ちましたよ。
あ、ありがとうございます、でもこれ僕のじゃありません。
そうですか。あなたのポケットから落ちたように見えたんですが。
はい、確かに僕のポケットから落ちた感覚がありました。しかし、僕のポケットには希望しか入っていないんです。落ちるとか、そういう類いではないんです。
なるほど、だとすれば私が拾ったこのカケラはあなたの希望という事になる。どれどれ少しのぞいてみましょう。うん、孤独しか見えない。あなたはどこかで孤独を捨てたがっている。違いますか?
おみそれしました。その通り、僕は人違いでもいいから誰かと話したかった。家族以外で話しかけてくれたのはあなただけです。ありがとう。
そう言い終えると、彼は飼い主に引っ張っていかれた。派手な服を着せられ、歩き難そうにその犬は去っていった。その犬のポケットは幾分か小さくなったように見えた。
- written by kim -
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