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hort story

パン
三ヶ月前から行方不明だった友人が見つかった。

無事で良かったが、ただ喜ぶわけにはいかない。
彼はたった二百円のパンを盗んで窃盗罪で捕まり、今は留置所にいる。
警察からの電話でそれを知った俺は、彼の身元請負人を頼まれてしまった。

なんとなくそれを引き受け、早速面会に訪れた。
面会室に入って来た彼は、面会人が俺だと気付いて少しびっくりしていた。
彼は挨拶も無しに、『俺はやってない』と静かに言った。
怒りが収まらないのか、横に座っている警察官を睨み付けたまま、少ししか話さず面会時間の15分は過ぎてしまった。
彼が連れていかれるとき、差し入れは何がいい?ととっさに聞いた。
すると彼は
『とにかくパンが欲しい』
と言った。
彼は笑っていなかった。

- written by kim -

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