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hort story

回る廻る
ある道を歩いていたら前を歩いていた老人が煙草を川に投げ捨てた。

おいおい、そりゃないだろと追いかけようとしたらつまずいて転んだ。

転んだ俺を避けようとした後ろの自転車が驚いて大きい声を上げた。

その声を聞いた近くのアパートに住む6代女性が何を勘違いしたのか

あわててベランダに出ようとしていつも大事にしている植木鉢を倒した。

悲しい気持ちでこぼれた土を寄せ集める。

そのとき飛んだホコリが舞い、下の階の部屋に落ちる。

洗濯物を干しながら大あくびをしていた35歳の主婦は、

口に入った何かに違和感を感じ、部屋に戻り洗面所でうがいをする。

自分のうがいの音で聞こえなかった電話の着信音。

お受験に落ちてしまった息子からの電話。

傷心の息子はもう一度電話をかける気にならず、とりあえず近くにあった公園に行く。

誰もいないかと思っていた公園には浮浪者が寝ていた。

この寒い中、浮浪者は薄着で寝ていた。

息子はお受験に受からなかったからこうなってしまうかもと想像した。

なんだか怖くなり、走って公園を出た。

飛び出てきた子供に気付いて白い車は急ブレーキをかけた。

その急ブレーキの音を俺は電車に乗る直前に聞いた。

俺はなんて事をしてしまったんだ。

- written by kim -

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