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hort story

あるギャラリー
10年前からやっている、地元の洋服屋さんにふらっと寄った時の事だ。
その店は黒を基調とした服が多く、
過激な模様のTシャツや、ドクロのデザインが施された
アクセサリーなどが整然と並べられている。
こっちをなんとなく見ている若い店員も無表情で愛想が無く、一見怖そうな雰囲気だ。
色々店内を見て回っていると、ふとこんな文字が目に入る。

「MADE IN MUSIC」。

悔しかった。
あまりに当たり前だった事を気付かされた。
若い頃音楽に狂っていた俺が、そう、まさにMADE IN MUSICだったんだ。
いつの間にかそれを忘れて、もう43歳になってしまっていた。

ふと、まだ俺も間に合うんじゃないかと思った。
手に持っていた就職情報誌をゴミ箱に投げ捨て、
急いでネクタイを解きながら、
俺はドクロのマークが描かれた革のジャンバーに手を伸ばした。
若い店員はそれを見て、少し笑った。

- written by kim -

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