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hort story

渡る
しばらく同じ湖に浮かんでいた二羽の渡り鳥が、
さっそうとどこかへ飛んでいった。
きっとまたどこか知らない土地に行くんだろう。
僕より少しだけ大きい羽のどこにそんな力があるのか聞いた事がある。
彼はこう答えた
「羽の力で飛ぶんじゃないんだよ
 羽なんて飾りに過ぎない、過去も飾りに過ぎない。
 大事にしているのは新鮮な空気と暖かいスープ、それだけだよ」

俺は彼を忘れないよ。
そして俺もそろそろ渡るんだ。

- written by kim -

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