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hort story

あるフェリーにて
ある島に渡るためにフェリーに乗っていたときの事だ。
派手なTシャツを着た女が俺の前に座った。
誰かの顔がプリントされているのは何となく遠くから分かっていたが、近くに来てその顔が誰だか判り、少し驚いた。
その顔は氷川きよしだったのだ。
しかも被せるように色々セリフが書かれている。

きっと氷川きよしのファンで、あまりの好きな気持ちで自分で作ったんだろうと思い、

凄いファンなんですね、彼が見たら喜ぶでしょうね

と話しかけた。すると意外な答えが返って来た。

『え?この人有名なんですか?私知らないですけど』

と冷たく言うじゃないか。俺はその女が嘘をついているのか本当に知らないのか判断ができず、黙ってしまった。

そこにまだ歩くのもおぼつかない三歳くらいの男の子がやって来た。女はその息子を抱き上げ、お菓子を食べさせた。

何となく気まずい雰囲気だった俺は話題を変えようと、その子にこう質問した。

かわいいですねーなんてお名前かな?

するとその子は元気一杯に答えた。

『きよしー!!』


女は足早にそこから去っていった。

- written by kim -

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